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ドイト・ワールド2.0

とあるサークルのとある奴らがとあるTRPGで理由のない暴力を振るうログ。

裏話の裏話

 

(忠告)

色んな影響を受けた過程で
元の裏話よりさらに内容が暴走しておりますので
話半分に見るのが適量かと思います

 

 

忠告したからな!覚悟しとけよ!

 

 

























…………

 

 

ビシィッ!
ドカッ!!

ガシャァン!!



「……げほっ。」

「チッ、興ガ冷メチマッタナ。」


ドアの閉まる音がする。


うっすらと目を開ける。
両手を繋がれた拘束台が倒れ、私は天井を睨んでいた。
先ほどまで私を好き勝手していた蛮族たちは
ようやく飽きたのか、隣の部屋に戻っていった。

 

「ぺっ。」


私は横を向いて、口に貯まった血を吐き捨てる。
そして深く息を吐いた。

 

 

数分と経たずに、今度は奥の部屋から女性が入ってきた。


女性は何やらこちらを一瞥すると、
片手で拘束台を持ち上げ、立て直した。


「うぐっ!」


本来成人の人間サイズに組まれたであろう拘束台で、私は再び宙づり状態になった。
限界まで上がる肩に再び痛みが走る。


「……誰だい?こいつに傷つけたのは。」
「ヒイッ!?」


彼女が何やら蛮族の言葉でしゃべると、その女性が元の部屋に戻っていく。

数秒後、凄まじい電撃音が聞こえたかと思うと、
再び女性が部屋へと戻ってきた。


……下半身を蛇に変えて。


「すまないね。どうもうちの手下たちは、あんたが気に食わないようだ。」
「……上等よ。私だって、今更蛮族に恨まれずにいられるなんて思ってない。
 それに、私が傷つくと困るのはあんただけでしょう。」
「よくわかってるじゃないか。」


そう言い終えた瞬間、首元に痛みが走る。


「っつ……!」


首元の動脈に牙が刺さり、血液が吸われるのを感じる。


「がっ……。」


肩まで力んでいた身体から、徐々に力が抜けていく。
頭がボーッとし、視界がぼやける。

 

「……ぷはっ。」
「うっ……ううっ……。」


数十秒ほどして、彼女が牙を離した。

そして私の首元の傷痕に手をあて、魔法を唱える。
流血が止まったのを確認すると、彼女は姿を元に戻した。


「やっぱり、あんまり美味しくないねぇ。」
「……ぐ……。」


多量の失血で強い吐き気とめまいがする。
言い返す気力すらもない。


「とはいえ、放浪のグラスランナーってのはいいわね。
 一緒にいた人間の狩人はあっさり死んでしまったけど、
 こいつは定住しているわけでもないから、アシもつかないし。」


ラミアは近くの椅子に腰かける。


「ゴブリン!飯持ってきな!」
「アイアイサー」


そういわれてゴブリンが持ってきたのは、
このラミアの女性が用意した食事だ。
肉、野菜、スープなど、捕虜にやるものにしてはずいぶん豪華である。


「よし。下がってな。」
「アイアイサー」


ゴブリンは隣の部屋に戻っていった。
ちらりと見えるその場所では、
黒焦げになったゴブリンやボガードらが騒いでいる。


ラミアの女性は肉を一口大に切り、私の口元に差し出した。
それを見て私は、肉に疑うこともなく食いつく。
吐き気を感じてはいるが、食べなかった時の明日一日の空腹感の方が恐ろしい。


「数日前までは嫌がったり吐き出したりしていたのに、
 今ではずいぶんおとなしくなったものだね。」
「……。」


食わなければ自分が死ぬ。
自分が死ねばこのラミアも困る。
だからこそ、彼女は私の食事に何かを仕組んだりはしない。
それどころか、ゴブリンらよりもまともな食事を用意する。


それに、私が死ねば次の捕虜を探しにいくだろう。
それだけはなんとしてでも避けたかった。

 

……

10分ほどして、食事を終える。
ラミアは最後に私に水を飲ますと、部屋に鍵をかけて出ていった。

部屋は真っ暗になり、ほんの少しの鉄格子から入る光しか見えない。


「……。」


食事をしたことで吐き気と空腹感は多少おさまった。
そしてそのまま明日のこの時間まで、ここで宙づりのまま過ごす。
何かがあるとすれば、気晴らしにボガードたちに殴られるか、それ以上のことをされるくらいだ。

 

「……くそっ。」


くやしさがこみ上げる。
私が罠に引っかからなければ、こんなことにはならなかった。
一緒にいた仲間の狩人は抵抗したために殺された。


涙があふれ、床に落ちる。
それに気付いて私は無理やり気を奮い立たせる。
流す涙も今は惜しい。



 

「……人だ。人がいる。」


目をつぶって眠る準備をしていると、ふと声が聞こえる。
目を開けて周りを見回すと、その鉄格子から何やら目が覗いていた。
どうやらエルフのような顔つきが見えた。


「ありゃ子供かな。ひどく衰弱してる。」
「あ、こっち見たぞ。」
「喋れそう?」


小さく聞こえた声に頷く。


「誰がいるか教えて。『ウィンドボイス』!」


私はばれないように小さな声で、
彼女らに知る限りの蛮族の情報を伝える。


「了解……。ちょっと待っててね、助けてあげるから!」


エルフの彼女は私にウィンクすると、鉄格子から離れる。

 

 


数分して、急にアジトの中が騒がしくなる。
武器がはじかれるような金属音、大きな風の音、蛮族の叫び声。


更に数分して、私のいる部屋の扉が開かれる。
そして傷ついたラミアが私の首にナイフを突きつけた。


そして目の前には剣を持った人間の男、妖精を連れたエルフの女性。


「【ルニア・スフレ】……いえ、ラミアのルニア。
 以前からラスベートに潜んでいたのはあなただったのね。」
「人族に害をなさない名誉人族ならともかく、
 僻地に子供を攫って血を吸ってたとはな。
 とっととお縄につきな!」

「くそっ、どこからバレた……!?」


そのラミア――名前をルニアと言うらしい――はずいぶんと慌てた表情をしていた。


「それ以上近づくなよ……こいつの首はいつでも刈れるんだ。」
「ちっ、人質の部屋に追い込んだのは愚策だったか。」


剣を持った男は一歩退く。


その時、ふと鉄格子の外が光ったかと思うと、一本の矢がルニアに刺さった。


「ぐっ!?」
「今だ!」


剣を持った男は、矢を喰らってたじろいだルニアを壁にたたきつける。


「大丈夫かい?」


どこから現れたのか、暗い色調の服を着た男が、
私の捕まっている手錠の鍵を外す。


「『ウィスパーヒール』!」
「大将と妖精使いちゃん、ここは任せるぜ。人質はこっちでなんとかする。」
「おう!」


私は男に軽々背負われる。


「軽っ……」
「衰弱しているからでしょう。早く運んであげないと。」


そこまで来て、安心感に包まれた私は目を閉じる。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「……ん、アリシアさーん。」


目を覚ます。


「大丈夫?もう着いたよ?」
「あ、うん……。」


ローゼンが私を揺り動かす。
目をこすり、周りを見る。
既に家の前で、あたりはすっかり真っ暗だった。


二人そろって馬車から降りる。


「今日は夜の狩りは行くの?」
「……やめとく。なんだかそんな気分じゃない。」
「だろーね。よっぽど怖い夢でも見たんでしょ。」
「だっ……!?」
「馬車に揺られながらずーっと泣いてるんだもの。
 いい夢なのか悪い夢なのかわからなかったけど、
 起こしてあげたほうがよかった?」
「……もういい。」


私は借家のドアを鍵で開く。




「久々の我が家だ~!」


ローゼンが真っ先に部屋に飛び込む。


「……もう真夜中ね。」


ローゼンの夕方の検査を終えて退院し、その後赤楽亭に顔を出した。
簡単な退院祝いの後、戻ってくる頃には日が変わっていた。


「私はさっさとお風呂入って寝ちゃうけど、
 アリシアさんはどうするの?すぐには寝られそうにない?」
「……。」


正直、ローゼンの看病を不眠で続けていただけあってまだ眠気が残っていた。


「私もすぐに寝る。」
「よし、じゃあ布団出すね。
 アリシアさんは先にシャワー浴びてきなよ。」
「はいはい。」


私はササッと寝間着を用意し、シャワーを浴びる。

その時、見慣れていた傷に再び目を留めた。


「……この傷。」


自分の右の脇腹にある傷。
これはあの夢で思い出したルニアというラミアに、
最初拘束されたときにつけられた傷だ。
そして首元を見ると、ここにも小さな傷痕がある。


「(いや、早く忘れよう……)。」


そんなことを今更思い出しても仕方ない。
そもそもあのラミアに、今は怒りも感じていない。



耳をすますと、ローゼンは鼻歌を歌っている。
何やらミュージックシェルをPTの仲間にもらったらしく、
その呪歌が気に入ったのかずっと歌っている。


私は素早くシャワーを済ませ、寝間着に着替えた。




「……ねえ。」
「何さ?」
「もう一つの布団は?」
「要らないでしょ。」
「えっ。」
「悪夢を見てしまったアリシアさんのために、
 今日は私が一緒に寝てあげようかなと思って。」
「大きなお世話よ!!」


ドシッ!


「あいた!んもー、病人には優しくしなきゃだめなんだぞー!」
「退院してきたでしょうが!」

私は自分で自分の布団を出す。
ローゼンの布団の隣に、ちょっと隙間を開けて並べる。


「ちぇー。」

ローゼンは不服そうにシャワーを浴びに行く。


それをよそに、私は自分の荷物を整理する。
明日からは再び狩りに戻りたい。


そのために、弓のメンテナンスにとりかかる。
ローゼンが運び込まれてきたあの日から放置していたため、
弦が張りっぱなしだった。


一通り弓全体の手入れを済ませる。

血糊を取り除き、弓にひび割れがないかを確認する。

そして新しい弦を用意し、弓の先に引っ掛け、ササッと付け替える。


「手慣れたもんだね。」
「重い。」


いつの間にかシャワーを済ませ、よりかかっているローゼンをどかす。
えびらの中に入っている矢の数を確認し、荷物の整理は終わりだ。


「じゃ、もう寝る?」
「明日も早いし、そうしましょ。」
「オッケー。」


ローゼンは明かりを消す。


「んじゃ、おやすみ。」
「おやすみ。」
「怖かったらこっちの布団に入ってきてもいいんだよ?」
「いい加減にしなさい。」


私は布団にもぐりこみ、ローゼンに背を向ける。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

 

「……。」


私は深呼吸をしてから、目を閉じた。


それでもやはり思い出す。
友が、ここに運び込まれてきたときのことを。


ぐっ、と布団の中で握りこぶしを作る。
自分の手でローゼンを助けてあげられなかったことを、今でも悔いている。
捕まっている間、ローゼンはどんな気持ちでいただろうか。


「大丈夫だよ。」
「!」

気が付けば、後ろにはローゼンがいた。
いつの間にか、布団をくっつけていたらしい。


「……何のこと?」
アリシアさんが昔蛮族に捕まって、
 それで冒険者に助けてもらったことも知ってる。
 アリシアさんが私のことをそれに重ねて、、
 狩りの合間に蛮族から情報収集してたことも知ってる。
 もう冒険者にならなくてもいいようにザントさんが取り計らってくれた仕事を
 私が断ったことにまだ反対してるのも知ってる。」


ローゼンは私のことをギュッと抱きしめる。


「でもね、本当のことを言えば、私のことなんて心配してほしくはないんだ。」


布団の中で、リエラは私の腕をつかむ。


「今日から、私はローゼンとして生きていく。
 親友だから、一緒にこうやって過ごしたりもするけど。
 もう私に縛られてこの町にいる必要もないし、
 私のことを優先してもらうこともない。」

「……。」


「いろいろあったけど、きっと、今が一つの変わり目なんだよ。
 私も変わるし、アリシアさんも変わる。ね?」



「……あんたは、どう変わるっていうの?」


私は振り返らずに聞いた。



「私?そうだなぁ……。」


少し戸惑ったふうな言い方をして、そして、

 


「親友が変わってくれるように、変わるかな。」

 


私は何も答えなかった。
代わりに、リエラの手をギュッと握った。

 

「……ふふふ。
 アリシアさんて普段落ち着いてるけど、意外と可愛げあるよね。」

「からかわないでちょうだい。」
「普段はニノさんとかをからかってるくせに。
 からかわれ慣れてないの?」
「……うっさい。」


リエラは私にグイッと身を寄せる。

 

アリシアさんって子供体温だよねー。」
「リエラと体格は大して変わらないでしょ。」
「そんなことないよー、あったかいもの。
 やっぱり布団は一つでよかったんじゃないのかな。」
「早く寝なさいって。」
「ぶーぶー。
 もっとこう、女の子のお話しとかしたーい。」
「いい加減にしないと怒るわよ。」
「はーい。」

 


正直、私の中で決着がついたわけじゃない。
かつての自分と同じ思いをしている人は、今もたくさんいる。
それは、蛮族に囚われた人族だけじゃない。

 

でも、私は一つ決心を固めることにした。
少なくとも、私の手の届くところにいる人に、
二度と、そんな思いをさせたくはないと。
そのために、自分の力を使うことをためらいはしないと。

 

 

 

 

 

 

 

裏話の裏話 おわり