ドイト・ワールド2.0

とあるサークルのとある奴らがとあるTRPGで理由のない暴力を振るうログ。

第十七セッション裏話

 

<注意>

 

このお話はセッション参加者への説明できない部分の補完を若干含めた裏話です

セッションに参加してないと何が何やらわからないと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「ローゼンさんとご面会のフォスター様ですね。こちらへどうぞ。」

 

神官の女性につれられ、歩いていく。

 

「彼女はどうやら魔導機文明の技術で強い精神効果を受けていたようですね。
 何やら記憶もあやふやで、気絶前の数分のことは何も覚えていないようです。」

 

話を聞き、歩いていった先に彼女はいた。

 

「ああ、ええと……。」

 

彼女は普段と違う白い服で、晴れ晴れした顔でわしを迎えた。

 

「……確かに名乗ってはおらんかったが。
 わしの名前はフォスター。赤楽亭の冒険者たちに依頼して、おぬしを助けたんじゃよ。」

「そうそうフォスターさん。今回はご迷惑おかけしました。」

「覚えておるのか?それじゃあ気絶前の、おぬしが仲間を襲ったときのことは……。」

「ああー……それは覚えてない。

 エストさんやトキちゃんに聞いたから知ってるけど。」

「……そうか。」

 

仮に思い出せないだけだとしても、無理して思い出すものでもあるまい。


「まあ、よかろう。無事に生きておってよかったな。

 後遺症が残ったらどうしようかと思ったぞい。」

「後遺症どころか、頭がいつになくスッキリしたよ。
 前までずーっと頭がズキズキして、イライラしてたからさ。」

 

笑う彼女の隣には、何やら壊れかけた装置がある。


「しっかし、皆がギリムの奴をとっちめてくれて助かったよ。
 フォスターさんもありがとう。」

「わしよりも、おぬしを助けた仲間たちに言っておやり。」

「……それもそうだね。」


彼女は、ベッドにもたれかかって眠っている、友人の頭を撫でる。

友人はベッドにつっぷして、すやすやと眠っている。

 

「しかし何故おぬしはあの時、あの研究室に居ったんじゃ?」

「ん?ああ、実はずっと傍にいたんだけど。」

「……もしやおぬし、ストーカーしておったのか?」

「ちょっとね。私は独自に調べものをしてたんだ。」

 

そう言ってローゼンは書類の束を取り出す。
それは、毒電波に関わる書類の一式だ。
あの依頼で見つけたもののコピーもあれば、見たことのない書類もある。

 

「前にも一度、ラスベートの周りで毒電波が発生したときがあって、

 アリシアさんも、依頼主の狩猟団体で毒電波の発生源を探してたんだ。

 私、その時ずーっと頭が痛くてさ。
 依頼が終わった後に頭痛が治まったから、その電波と何か関連してないかって、

 アリシアさんと一緒に調べてたわけ。」

「そういえば、前回その依頼を受けたとクレア殿が言っておったのう。」

「前回はアリシアさんが赤楽亭の皆に接触して、私は別行動。
 今回は私が赤楽亭の皆を追跡して、アリシアさんは別行動。
 まあ、悪く思わないでね。」

「それで、皆が増幅装置の破壊に乗り出したとき、おぬしだけが残ったのか?」

「そゆこと。

 パスワードになんとなく思い当たる節があって、

 入力してみたら開いちゃったんだよね。」

「……何故その場で現れて、皆を説得しなかったのじゃ?」

「ギリムの奴が留守だと思ってたんだ。

 実際にはドレイクカウントが残ってたけど。」

 

しかし彼女は呆れたように首を振ると、

隣の机に乗せてあったファイルに手を伸ばす。

 

「まあ……それもなんだけど、書置きを読んで気が付いたの。

 これは私個人の問題だって。」

 

彼女は首元の、バラのチョーカーを取り外す。

少なくとも、それは暴走した彼女と戦っている時にはなかったはずの物だ。
そしてそれが、彼女の友人――わしが依頼を頼んだ時に赤楽亭にいた――の首元にあったものだと気づくのに少し時間がかかった。


「このチョーカーに嫌気が刺して、アリシアさんに預けてたんだ。
 知らない人の名前が書いてあるんだもの。」

 

取り外したチョーカーの裏には、「リエラ・バウザー」の名前。

そして彼女は書類の束から紙切れを取り出す。
それは冒険者たちと冒険している最中に見つけた書類の中にあった、
一枚の書置きだった。

 

「メティア君が読んでた奴。」


彼女はそこから一枚の書置きを取り出す。

ジョセフが娘を助けるために研究を行っていたことが書かれていたものだ。

 

「まあ、ここまでくれば、馬鹿でも何が起きたかわかるよね。」

 

「……」

彼女は自虐めいて笑う。

「自分が覚えてる限り一番古い記憶を思い出すとね。
 知らない白衣の男の人が、泣きながら銃殺されていたのを思い出すんだ。」

「私の隣にはギリムがいてね。
 何やら、この子はお前と私の子だとか、おっしゃって。
 それを私は特に疑問にも思わず信じていてね。」

「んであいつがニヤニヤしながら言うんだ。
 『バラのチョーカーが似合うお前には、

        "ローゼン"なんて名前はどうだ?』なんてね。」

 

「よせ。」

 

わしは彼女を制した。

 

「……もうおぬしはやつらから解放されたんじゃ。
 今更思い出すこともあるまい?
 おぬしはリエラ・バウザーじゃろう?」


「リエラ・バウザーは死んだよ。彼女の記憶はもうないから。」

 

"彼女"はそう答える。

 

そしてその書置きと、バラのチョーカーを丁寧に保管する。


「ジョセフ・バウザーの娘リエラ・バウザーは、ギリムの手で殺された。
 今の私はローゼン
 ある女性の無念を晴らすべく、ある十三魔将が憎いだけの、ただの冒険者。」

 

決意を新たに、彼女は覚悟の表情を見せる。

 

 

「……ジョセフに似て、頑固じゃのうおぬし。」

「あれ、そうなの?」

「そうじゃぞ、あやつは何度もわしと小競り合いを起こしてのう。
 始めて会った時なんかは、依頼者からの報酬金をどう分けるかでもめたものじゃ。」

「何それ……。器小さいなぁ。」

「それ以外にも、彼はマギテックの技術には絶対の自信を持っておってのう。
 どう見ても傍から失敗したとしか見えんのに、

 頑なに『これは成功だ!』と言い張って
 投げたボムが自陣で爆発したこともあったぞい。」

「えー……やだなそんな父さん。」

「おぬしと同レベルじゃぞい。」

「げぇっ。」

 

笑う彼女に胸を撫で下ろす。
友人や仲間の存在を考えると、心配は無用だったのかもしれない。

 

 

ふと、遠くから白衣の男性が、こちらへ歩いてくるのが見えた。

 

「邪魔するぞ。」

「あれ。同じ赤楽亭の……ええと、何て名前だっけ。」

「ザントだ。

 ……隣はアリシアに……冒険者のフォスターか。

 取り込み中だったか?」

「いや、わしはもう行く。」


わしは席を立つ。


「用事がまだなら外で待つぞ?」

「いや、今終わったとこじゃ。」


わしはその白衣の男とすれ違う。


「すまぬがおぬし。」

「なんだ?」

エドワード・クレイトン、という名前に聞き覚えはあるかの?」

「……知らん。今まで会ってきた奴にもいない。」

「そうか。」


わしは、その言葉が真実ではないと確信しておった。

しかし、それを問い詰めることもなく、その場を離れる。


「フォスターさん、今回はありがとうございました。」

「礼はいらんぞい。」

 

ローゼンの言葉を後ろに、わしはラスベートを出発し、故郷を目指した。

引退後は、この地に戻って息子と、あやつの娘の姿を見届けるのも、いいかもしれないのう。